大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

徳島地方裁判所 昭和48年(む)63号 決定

請求者 昭和四八年四月一三日徳島東署逮捕番号一号の女 外二名

主文

本件各準抗告の申立を棄却する。

理由

本件準抗告の申立の趣旨および理由は別紙準抗告申立書記載のとおりであるからここにこれを引用する。

本件について提出された準抗告申立書を検討するに、請求者として「昭和四八年四月一三日徳島東署逮捕番号一号の女、二号の女、三号の女」という記載があり、各番号の下にそれぞれ指印がしてあるだけであつて請求者らの署名はいずれも見当らない。

そこで右のような氏名を明示しない準抗告の適否について判断するに、準抗告の請求をするには、請求書を管轄裁判所に差し出さなければならないことは刑事訴訟法四三一条に定めるところであり、右請求書には請求者の署名押印を要することは、刑事訴訟規則六〇条に規定するとおりであつて、ここにいう署名が請求者自身の氏名を自署することであることはいうまでもない。ところが、本件準抗告請求書には前記のような記載があるだけで請求者らの署名は存在しない。

請求者らは現在すでに身体の拘束から釈放されており、そのうえで積極的に裁判所に対し訴訟の主体として刑事訴訟法上の請求をしているのであるから、請求者らが誠実に訴訟上の権利を行使しなければならないことは刑事訴訟規則一条二項に照らし明らかなところである。

してみると、とくに氏名を記載することのできない合理的理由の認められない本件において、これに違反して前記のように請求者らの氏名を明示しない請求書によつてした本件各準抗告の請求手続はいずれも無効であると解するのが相当である。

よつて本件各準抗告の請求は刑事訴訟法四三二条、四二六条一項によりいずれもこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例